トイレつまり

新築した大きな、ガラスだらけのビルと、古いけれどもやはり大きいビルとにはさまれている。水漏れをパイプにあげて手すりに寄せ、トイレつまり 枚方市から封筒を出した。ガラスの扉を押し、なかに入った。せまい廊下をまっすぐいくと、左側に、階段がある。五階建てだが、エレベーターはないのだ。急な階段を、ぼくは、あがっていった。いつも、ビルぜんたいが、しんとしている。踊り場ごとに、廊下が三方にのびている。その廊下に面して、どのフロアにも、いくつかの便所がある。ぼくがいくのは、いちばんうえの、五階だ。五階へあがるまでに、あるいは、五階から下へ降りてくるまで、階段で人とすれちがったことが、これまで一度もない。足音すら、聞いたことがない。一階の、せまい通路の壁には、このビルに入居している会社や事務所の名前が濃いブルーのプラスチック板に白いプラスチックの字で、貼りつけてある。今日も、五階まで、誰ともすれちがわなかった。廊下は、五階には、一本しかない。つき当たりの扉を、ぼくはいつもノックする。つき当たりへいくまでに、右側にひとつ、左側にふたつ、扉がある。