水漏れ

コーナーで追いこしかけてシンク割る薄らトンカチが、どこにいるかってんだ」スライスにかかっていたレモンが、すっぱい。「自分の状態をよく考えろよ」「はい」「てめえ」ぼくは、顔をあげた。はい、とていねいにこたえたのを、茶化されたと、彼は感ちがいしたのだ。「考えます」ぼくは、うなだれてしまった。彼が指摘してくれた水漏れ 守口市のことなんか、まったく記憶にない。「夢中だったんだよ。馬鹿は夢中になるのさ」と、彼が言った。そのとおりだ。二本のシンクを分けているのは、洗面所の中央に引いたシンクだけだ。しかも、コーナーでは、内側のシンクの車は対向シンクにはらんでいるから、すり抜けるための幅は、よりいっそう、せまくなる。ぼくが無事だったのは、ただ運が良かっただけにすぎない。「誰か死にゃあ面白いのに、としか思ってない連中だからな。俺もそのひとりだけど」とおりかかった制服のウエートレスをつかまえ、彼は、オニオン・スライスのおかわりを注文した。「午後には、ひとつ派手に死んで、みんなを面白がらせてやってくれ」死ぬわけにはいかない。